池を掘り、水を流す
池を掘り、水を流す
商売とは、池を掘り、水を流すようなもの
事業についてあれこれ考える時「水が流れるかどうか」のイメージで考えます。
池を掘り、その池に水が流れてくるか。水源はあるのか。
ミスミ三枝 シナジーモデル
事業のシナジーが得られるのは、①事業・商品に関連性がある、②共通の技術を使っている、③市場・顧客が重なっている、④販売チャネルが重なっている、⑤既存のブランドイメージを利用できる、⑥競争相手が同じなので戦略上の連動効果がある、⑦勝ち戦に至る重要な競争要因が同じで、こちらはその戦いに慣れている、⑧必要とされる社内組織の強みが同じなのでそれを使える、などだ。
ザ・会社改造--340人からグローバル1万人企業へ 第1章、第2節
8つの要素
- Product : 事業商品の関連性
- Technology : 共通の技術
- Customer : 市場顧客が重なる
- Channel : 販売チャネルが重なる
- Brand : 既存のブランドイメージの転用
- Competitor : 競争相手が同じなので戦略上の連動効果
- Win : 勝ち筋の競争要因が同じ
- Team : 社内組織の強みが同じ
あなたは友人と、スコップを持って、池を掘り始める。
どこかの水源から、あなたたちが作ったパイプと、引力によって、水が流れてくる。
水源を独り占めしたいので、競争相手のパイプを爆弾で吹き飛ばす。
考えること
この8つは、既存事業があるなかで、新規事業を検討するためのリストではあるが、既存事業がない場合も利用できる。企業活動として、8つの要素を見ていく。なにもないなかで始めて、8つの要素がどうなるのが理想なのか考える?
Y Combinator アイデア評価方法
- Problem
- Popular, 人気, 1M+ (数百万の人々が抱えている課題)
- Growing, 成長, 20%/y (年率20%で成長している市場)
- Urgent, 緊急, Now (人々が直ちに解決したい課題)
- Expensive, 高価, $B (数十億ドル規模の市場規模)
- Mandatory, 必須, Law (法改正などで生まれた課題)
- Frequent, 頻度, Hourly (1日に何回も解決する必要がある課題)
- Insight
- Founder, 創業者, 1/10 (課題を解決できる世界中の10人のうちの1人か)
- Market, 市場, 20%/y (市場が年率20%で成長しているか)
- Product, 製品, 10X (競合製品の10倍優れているか)
- Acquisition, 流通, $0 (口コミで成長が可能か)
- Monopoly, 独占, Boolean (成長するにつれ、負けにくくなっているか)
Solution は不要というメッセージ
Solution が不要というよりも、正しい Problem と Insight があれば、Solution も結果的に正しいものになるということだと解釈している。
ポイント
Problem の評価を 6つの点で整理している点が素晴らしい。Popular, Growing, Expensive, Mandatory については完璧な事業計画なのに、Urgent, Frequent が全くダメでうまくいかないプランというのを見ることがある。素晴らしい商品も、緊急で頻度高く利用してもらえないと、事業を改善できないので、徐々に苦しくなっていく。
5W1H / Pitch / Why you, Why now? / PEST
5W1H
- What : なにをやっている?
- Who : だれがやっているの?
- Why : なんでやるの?
- Where : どんな市場?
- When : いつやるの?
- How : どうやるの?
Pitch
- Problem : どんな課題を解決するのか?
- Solution : どんな商品か?
- Traction : 現在、どのくらい顧客がいるのか?
- Team : どんなチームでやっているのか?
- Vision : うまくいったら将来どうなるのか?
Why you, Why now?
- Why you : なぜあなたがやるのか? 他の人がやるのではだめなのか?
- Why now : なぜ今やるべきなのか? 数年前できなかった理由は?
PEST
水源は変化とともに現れます。大雨が降ったり、地中から溢れてきたり、他の水源が崩壊して統合してしまったり。疫病、金融危機、規制緩和、戦争、イノベーション などで変化します。マクロな変化の分析が、水源の発見に役立ちます。
- Politics : 政治変化
- Economics : 経済変化
- Society : 社会変化
- Technology : 技術変化
共通点
水源 > 池 = マーケットが大切
マーケットとは、課題であり、顧客です (Market = Problem = Customer)。
池ではなく、水源が大切です。池の話ではなく、水源の話をしましょう。池を作る人たちではなく、水源を発見する探検家のような気持ちで事業に取り組みましょう。
- とても優秀な人たちが、寝食を忘れて、素晴らしい技術を使って、素晴らしい製品を作る
- 今まさに生まれた水源の近くに、池を作る
優秀かどうかも、頑張っているかも、関係ありません。
水源の近くに、池を掘り、勝手に水が流れてくるのが理想です。
労働集約で、小さく始める。スケールしないことをしましょう。水源の発見が優先です。パイプなしで、バケツリレーをしましょう。池なしでも、水を汲みに行きましょう。
池を作り、水を流してみないと、本当に水源があるのかわからないというジレンマを受け入れる。
水源があるとわかっていれば苦労しません。池を掘って、パイプをつながないとわかりません。
市場規模、ステージ
- (1) SOM (Serviceable Obtainable Market)
- エントリー
- 市場投入時に獲得したいセグメント領域
- 例. ハーバード大学の学生
- (2) SAM (Serviceable Available Market)
- スケール
- リーチ可能な最大
- 例. 英語圏のネット環境のある人たち
- (3) TAM (Total Addressable Market)
- モノポリー
- 全世界の総需要
- 例. 全人口60億人
市場の拡張性を考える
まずは、エントリー可能かどうか? 針の穴を通すようにニッチに参入し、不意打ちの電撃戦を仕掛けて、競合他社や大企業に気づかれないうちにエントリーする。
データの類似性から、近接マーケットへの参入を考える。周辺領土を攻める。近くにある水源に攻める。事業をやる上で集めるデータを精査していくことで、付近の水源を発見することができる。この段階でスケール可能になる。
市場規模
市場規模はボトムアップで算出する。客数の上限、生産キャップ、利益率と再投資を考える。見込み顧客リストと営業資料から考える。トップダウンで、特定産業の売上高を足し算しても意味がない。
- 数量(顧客) x 単価 = 売上
- 客数の上限(または生産キャップ) x 最大単価 (アップセル上限) = 市場規模
参考
ストーリーライン : 現在 -> 未来
個人的に好きな、ストーリーラインが以下の流れ。
現在の話(micro)と、未来の話(macro)が分けられていて、
現実的でありつつ、空想的であるので、うまくジレンマを内包できている印象になる。
現在
- こんなことをやっていて、 <= What
- こんな人たちの、こんな課題を、 <= Customer/Problem
- こんな風に解決している。 <= Solution
- いまのところ、このぐらいの人が使ってくれていて、 <= KPI/Traction
- 同じような人がこのくらいいて、 <= Market/SOM
- 1人に提供するまでにこのぐらいの費用がかかる。 <= Channel/CPA
- いくつかの理由で数年前はできなくて、 <= Why now
- 今こんなチームでやっている。 <= Why you
未来
- 大きな課題意識としては、こんなのがあって、 <= Mission
- うまくいくと、こんな人たちもお客になって、 <= SAM, TAM
- 同じことをしようとする人たちを無効化できて、競争しないですむ <= Monopoly
合体 & 補助線
合体
補助線
事業について考える時、下記の図だけコピー用紙に書いてから思考することが多い。
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